フリーランスでも与信枠を設定すべきか
与信枠とは、信用をどれだけ与えられるかの限度のことです。つまり、どれだけ売掛金の回収を待ってあげるべきかということで、フリーランスであっても取引する上で大切な概念です。
与信枠の運用
こんにちは、オフィスペンぎんです。
個人で業務を請け負うような小さな仕事であっても、顧客に対して「与信枠」を設定した方が良いと思うことがよくあります。
与信とは、文字通り、信用を付与することです。信用を付与するといっても漠然としていてわかりずらいと思いますので、「一定期間、代金の支払を待ってあげる」と考えると理解しやすいと思います。信用があるからこそ、支払を待ってあげられます。
与信という概念は、金融業界でよく使われます。身近な例をあげると、クレジットカードの限度額は与信枠と言い換えることができます。
商売でいう与信枠とは、どれだけの金額までなら、代金を受け取らないまま商品やサービスの提供を続けられるかという限度額のことです。あるいは、後払いで請け負うことができる、商品やサービスの限度額のことです。会計的にいうと、売掛の限度額です。
与信枠が大きい(付与する信用が大きい)= 売掛金が大きくてもOK → ある程度まとめて請求してもOK
与信枠が小さい(付与する信用が小さい)= 売掛金は小さく抑える → 頻繁に請求すべき
代金回収不能のリスクに備える
世の中人それぞれで、残念ながら性善説が成り立たない場合もあります。商品やサービスを問題なく提供したからといって、必ずしも代金が支払われる保証はありません。踏み倒そうとする輩もいなくはありません。他にも、顧客が倒産してしまえば、売掛金の回収は困難になり、回収するための費用を考えるだけでも大きな負担です。
フリーランスであっても、売上が大きくなりそうなら、債権が回収不能になるリスクも考えるべきかと思います。そのためにも、自衛策として、顧客に対して与信枠を設けるのは有効です。
与信が小さければ、小さいなりの対応を
具体的な与信枠の設定は、ケース・バイ・ケースです。売上や顧客の事業規模に応じて、感覚的に決めることも間違いではないと思います。顧客が大手であれば与信枠を大きく、個人事業主であれば与信枠を小さく、とするのもアリだと思います。
与信枠が小さい顧客に対しては、前払いをお願いする、こまめに請求する、着手金や手付金を支払ってもらうなどの対応があります。一方で、与信枠が大きい顧客に対しては、締日を決めて後払いにすることで、事務作業を軽減することができます(キャッシュフローは滞りますが)。
クラウドソーシングなら安心か
売り手と買い手をつなげてくれるクラウドソーシングを活用する場合は、特に与信枠について考慮する必要はないかもしれません。通常、クラウドソーシングでは、支払を保証する制度が整っているからです。売掛回収の心配がなく、請求処理の手間も省けるのは、クラウドソーシングを活用する大きなメリットです。
しかし、完全にリスクがなくなるわけではありません。クラウドソーシングを運営する会社が倒産してしまえば、アカウントにたまっている売上は回収できなくなるおそれがあります。そのため、可能であれば、頻繁に出金するのが無難です。
また、プラットフォームサービスは過熱気味で、さまざまなクラウドソーシングサイトがありますが、なるべく大きいところを利用したほうが倒産リスクの回避につながるかもしれません。
付与される信用は利益
与信は、自らが付与される立場になることも少なくないと思います。つまり、発注者になる場合です。
信用を付与されること、つまり支払を猶予してもらうことは、金融業界などでは「期限の利益」と表現します。猶予がなぜ利益なのでか。それは、支払が猶予される期間、支払にあてるお金を投資や運用、資金繰りなど、自由に使うことができるためです。そのため、事業が大きくなれば、与信のインパクトは大きくなります。特に、信用があれば、キャッシュフローが良くなります。
なお、期限の利益は、なんらかの原因によって失われることがあります。いわゆる「期限の利益の喪失」というもので、契約書でよく取り決められます。契約違反があったり、義務の不履行があったり、場合によっては支払能力に懸念があるだけで、期限の利益は喪失しかねません。期限の利益が喪失すると「支払期限に関係なく、代金をすぐに支払え!」となってしまいます。
与信枠を設定する以外にも、契約書で期限の利益の喪失を取り決めておくと、不払い対策になるかもしれません。