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混乱しやすい[~元/~先][~er/~ee]

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違いは「動作を行う側か、動作が行われる側か」

日本語で対をなす「~元」と「~先」は、どちらが動作を行っている側で、行われている側なのか、混乱しやすいようです。

基本的に「~元」は動作を行う側を指します。

販売元なら販売する側、仕入元なら仕入する側です。

「~元」の例
  • 販売元:販売する側であり、販売者。
  • 仕入元:仕入する側であり、発注者。
  • 調達元:調達する側であり、発注者。
  • 発送元:発送する側であり、発送人。
  • 請求元:請求する側であり、請求人。
  • 支払元:支払する側であり、支払人。

一方「~先」は動作が行われる側を指します。

販売先なら販売される側、仕入先なら仕入される側といった具合です。

「~先」の例
  • 販売先:販売される側であり、購入者。
  • 仕入先:仕入される側であり、供給者。
  • 調達先:調達される側であり、供給者。
  • 発送先:発送される側であり、受取人。
  • 請求先:請求される側であり、支払人。
  • 支払先:支払われる側であり、領収者。

しかし、ビジネスを通じてさまざまな会社の文書に目を通していると、「~先」と「~元」を混同しているケースがよく目につきます。

中でも、「仕入元」は本来言葉の成り立ちから言えば仕入れを行う側(発注者や購入者)ですが、供給する側(供給者や受注者)を指して使われることも多々あり、もはや慣例的に仕入先の意味で使っても許容されるほどです。

さらに、厄介なのが入手先と入手元の違いです。本来であれば、入手される、つまり入手の対象物を渡す側が「入手先」であって、入手する側が「入手元」です。なので、仕入という言葉で考えると、入手先=仕入先、入手元=仕入元と一致してしかるべきです。

しかし、実際には、入手元も対象物を渡す側の意味で使われています。挙句に、入手先と入手元の違いについて説明するサイトはたくさんありますが、入手先は対象物を直接渡した人で、入手元はその直接渡した人に対象物を渡した人であると、頓珍漢な説明が出回る始末です。

この原因は、おそらく「元」という漢字の解釈の仕方にあると思います。元の意味は「発生源」です。本来は動作の発生源であるけど、動作に対象物がある場合には、その対象物が生まれたところ、と解釈されてしまっているのでないでしょうか。

例えば、「製品の仕入」であれば、仕入という動作の発生源ではなく、製品自体の発生源として。「情報の入手」であれば、入手という動作の発生源ではなく、情報自体の出所として。

元の意味をみな一様に正しく理解していても、元のかかりかた、どの言葉にくっつくのか、どの要素にくっつくのかは、人によって解釈が異なるため、このような「ズレ」が生じていると筆者は考えています。

また、「製造先を探しています」といった言葉を見かけることがありますが、これは単に「製造委託先を探している」という不親切な省略だと思われます。

さらに、例外的に「受入先」は完全に受け入れる側を指す意味で用いられていますが、成り立ちからすれば「受入元」とするのが妥当です。派遣先=受入元ですね。この「受〇先」という言い方については、「受注先?受託先?「受〇先」の誤った使い方と言い換え」でもう少し掘り下げています。

筆者は翻訳者ですが、翻訳者からすると「~元」「~先」がそれぞれ何を指しているのか文意から読み取って、適切な訳を当てないと誤訳になってしまうので、いっそう気を払うところです。

英語でも同様の使い分けがある

日本語の「~元」「~先」に対応するように、英語にも "er/or" 、 "ee" があります。

いずれも動詞にくっついて、その動作を行う者("er/or")、動作が行われる者("ee")の意味になります。

er/orの例
  • employer:雇用する側であり、雇用主。
  • licenser/licensor:権利を許諾する側であり、許諾者。
  • payer:支払う側であり、支払人。
  • trainer:訓練・教育する側であり、いわゆるトレイナー。
  • adviser:助言・忠告を行う側であり、いわゆるアドバイザー。
eeの例
  • employee:雇用される側であり、被雇用者。
  • licensee:権利を許諾される側であり、被許諾者または権利使用者。
  • payee:支払いをされる側であり、領収者。
  • trainee:訓練・教育を受ける側であり、訓練生・生徒。
  • advisee:助言・忠告を受ける側であり、被助言者。

悩ましい "Outsourcer" と "Outsourcee"

"outsource"(外注する;外部に委託する)から派生している "outsourcer" はちょっと頭を抱えてしまいます。

例のごとく、言葉の成り立ちや原則から言えば、"outsourcer" は委託する側(委託者)を指すはず、・・と思いきや、むしろ委託される側(受託者)を指すのが一般的なようです。"Oxford Dictionaries" によると、次のように定義されています。

■ outsourcer:

A person or organization which provides goods or services by contract from outside a particular organization or area; an external supplier.

"outsourcer" について調べてみると、一応は「委託者」の意味もあるようですが、通常は「受託者」の意味で使うのだから、混乱すること待ったなし!

本来であれば、受託者は "outsourcee" であって然るべきかもしれませんが、"outsourcee" は普段使いしないようですね。先ほどの "Oxford Dictionaries" にも、"outsourcee" という単語は載っていませんでした。

ただ、契約書など、正式な文書で明確に委託者と受託者を分けなければならない場合には、①委託者を"outsourcee" として、受託者を "outsourcer" とするか、②委託者を"outsourcer" として、受託者を "outsourcee" とするように、使い分けることはあるようです。

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