無料で翻訳!とりあえず使える英語に翻訳するには
自動翻訳が精度を増す一方で、翻訳会社や翻訳者が姿を消すことはいまだにありません。これは自動翻訳の限界を物語っているように映るかもしれません。しかし、一翻訳者として、私は自動翻訳に近い将来職を奪われてしまうのではとヒヤヒヤしています。
自動翻訳は、正しく使えば、非常に役立つと思います。私自身は仕事で自動翻訳を使いませんが、自動翻訳で「とりあえず理解できる文章」を生成するのは十分に可能です。では、どのように改善するのか・・その答えはインプットの改善です。
翻訳はなぜ高い?
自動翻訳は、使い方次第で正しい意味の訳文を生成することはできますが、自然な表現や文脈からの推測はまだまだ難しいようです。そのため、完成度の高い訳文を生むには、やはり人の頭と手を使わなければなりません。そうなると当然、お金がかかります。
私は翻訳会社にいたころ、顧客からよく「翻訳って思ったより高いですね」との感想を聞きました。
翻訳会社が翻訳業務を請け負うと、少なくとも案件の処理業務を手配するコーディネーター、翻訳を担当する翻訳者、校正や校閲をかけるチェッカーなどの専門知識を持った人手が必要になります。翻訳産業は、いわゆる「労働集約型」であって、要するにサービスを提供するために多くの人がかかわるので、その分当然人件費がかさんでしまいます。
海外の「安い」翻訳者を使ったり、Tradosをはじめとする翻訳支援ソフトウェアを導入したりと、企業努力はもちろんあります。しかし、最低限の品質を担保する以上は、翻訳産業にも一定の相場があり、これ以上安くはならないという下限があります。
そして、人の頭と手で行う翻訳の品質には当然のように差が生まれます。長らく翻訳業界にいた者として、翻訳は「安かろう、悪かろう」です。とはいっても高ければ品質が良い、と一概に言えないところが難しいです。
無料で翻訳するには
最近では、フリーランスや個人事業主として活躍する人が増えてきています。販路やサービス提供先もグローバルになり、翻訳、特に英訳のニーズが高いようです。例えば、アプリやソフトウェアなどを開発しているプログラマーやエンジニアからは、作品の英語版をリリースしたいとの声をよく聞きます。YouTuberやブロガーなどのインフルエンサーにも、英語を使って世界に活躍の場を広げようとする動きがあります。
しかし、先にもふれたとおり、翻訳会社に依頼すると結構なお金がかかります。特にフリーランスや個人事業主では翻訳にお金がかけられず、翻訳会社に依頼するのはハードルが高いかもしれません。
しっかりとした翻訳を望むのであれば、翻訳会社に頼むのが無難です。しかし、もしとりあえず通じればよい、間に合わせでよい、内部的に使用するので表現力などは問わない、といった具合であれば、無料で翻訳する方法があります。
それこそ、冒頭でもふれた自動翻訳を使用する方法です。しかし、自動翻訳のポテンシャルを発揮させるのには、ちょっとしたコツがあります。
自動翻訳を使いこなす
自動翻訳は、まだデタラメで使い物にならないと評価されがちですが、実際にはその精度はバカになりません。使い方次第で、大いに役立つ強力なツールです。
自動翻訳が期待されるパフォーマンスを発揮できないのは、平たくいうと「インプットが悪い」からです。インプットとは、翻訳したい原文のことです。実はこれ、翻訳会社や翻訳者として実際に翻訳業務を請け負う際にも、同じことが言えます(粗悪なインプットから良質なアウトプットを生み出すのが翻訳者の腕の見せ所ともいえます)。
とりわけ日本語では省略する、主述関係をはっきりさせない、一文中に主語が変わる、動詞と目的語を正しく使わない、やたらと比喩を使う、ということが頻繁に行われています。人と人とのコミュニケーションでは、聞き手または読み手が補って正しく解釈してくれますが、翻訳機が相手だとそうもいきません。
どのようなインプットがNGなのか、いくつか例をあげてみます。なお、使用する翻訳機はトップクラスの精度を誇るGoogle翻訳で、無料で誰でも使うことができます。
悪いインプットの例1
これは非常に不親切なインプットです。
実際の会話なんかでは、話し手と聞き手は誰が遅刻した結果、誰が怒ったのか、推測がつきます。しかし、翻訳機には言葉の背景や事情が理解できていません。
Google翻訳では、がんばって主語をIで補ってくれましたが、「私が昨日遅刻したため、私は怒った」とうまく訳せませんでした。
これを改善するためには、動作の主体(主語)を明示しましょう。主語を抜くのは、日本語の大きな特徴なので、主語をしっかり明示するだけでも、翻訳精度は高まります。
今度は良い感じに訳せています。
悪いインプットの例2
この日本語は見出しコピーとしては悪くありません。しかし、Google翻訳は、怪獣がラーメン屋の建物をバリバリ食べるような表現に直訳してしまいました。
食べるのはラーメン屋ではなくラーメンです。
翻訳機が正しく解析できるように、目的語に対しては適切な動詞を使いましょう。
良い感じです。平易な英訳ですが、当たり障りなく十分に通じます。
これも良い感じに訳せています。実際にはby ramen addictsなのかby a ramen addictなのか判断する必要がありますが「とりあえず」は英訳できています。
悪いインプットの例3
どこかドラクエで聞き覚えのあるセリフですが、Google翻訳は、あげるの意味での「やる」を正しく理解できませんでした。この「やる」のように、なかばスラングのような言葉の使用は控えましょう。
このように、もう少し丁寧な言葉づかいに直してインプットすると、しっかり翻訳してくれます。
悪いインプットの例4
自動翻訳は、まだ言葉遊びに対応できていません。ダジャレやギャグ、回文など、日本語だからこそ成り立つようなものは、基本的に個別に対応する必要があります。
気になる箇所はQ&Aサービスを利用する
このようにインプットに配慮することで、自動翻訳の精度は飛躍的に高まります。これだけでも可読性のある英文にすることはできますが、細かく見るとちょっと違う、となるのが普通です。もし、これを改善したいのなら、無料のQ&Aサービスを活用するのが無難です。もっとも有名なところでいえば、Yahoo!知恵袋でしょう。
Yahoo!知恵袋で質問をすると、たいていは誰かしらが回答してくれます。質問するときには原文を提示して、このように訳したけど、ここをもう少し修正したいと具体的にお願いすると、回答もつきやすくなります。
回答してもらったら、しっかしとお礼をしましょう。そうすると、いつも助けてくれる頼れる「チエリアン」(知恵袋回答者)ができるかもしれません。
もう少し品質を高めたいなら
Google翻訳などの自動翻訳機を使うことで、とりあえず読めるぐらいの英訳文を生成することは可能です。しかし、ビジネスなどでは、「とりあえず」で済ませられない場合もあると思います。その場合は、どうしてもいくらかお金を払う必要が出てくると思います。
有料で依頼する場合、翻訳会社を通さずに、翻訳者に直接依頼することで、いくらか費用の負担を抑えられます。翻訳者は、フリーランスが多く集まるクラウドソーシングを利用すると簡単に見つけられます。
ただ、翻訳会社を通さない以上、翻訳の品質には気をつけたいところです。翻訳会社であれば翻訳者による翻訳に対してチェックが入るのが普通ですが、直接翻訳者と取引する場合には、自分でチェックする必要が出てきます。なお、私の経験からすると、まったくミスのない完璧な翻訳を提供する翻訳者はほぼゼロでした。どんなベテランであっても、どんな有能な人でも、必ずミスはあります。
翻訳者を選ぶときは、クラウドソーシングであればその人に対する評価を参考に、少量ずつ依頼するのが良いでしょう。また、試訳に対応してくれる人もいるので、ダメもとで聞いてみると良いでしょう。
翻訳を依頼できるクラウドソーシング
- ココナラ
- ランサーズ
- クラウドワークス
- Gengo
翻訳者を探せるサイト
- 翻訳者ディレクトリ
- 一般社団法人 翻訳者連盟