クリエイターインタビュー
ゲームクリエイターCoffeeBreakさん
シリーズとなったクリエイターインタビュー、今回はシンプルゲームでスマッシュヒットを続けるCoffeeBreakさん(以下「コーヒーさん」)にお話を伺いました。聞き手は「ペンギンの教室」運営のオフィスペンぎんです。
ミニミニ農園
ミニミニ農園を作る以前の話になるのですが、それまでにも色々なゲームを作りはじめては頓挫して、作りはじめては頓挫してを数年繰り返していました。
そのうちに、毎回共通して必ず行き詰まるポイントがあることがわかりました。
それがグラフィックです。
ゲーム制作を進めるにつれて、様々なグラフィック素材が必要になっていくと思いますが、その度に手が止まりました。
はじめのうちは頑張って作るのですが、だんだんとそれが苦しくなってきて、ある段階でパタっと手が動かなくなって制作を止めてしまっていました。
そこで、このままでは一生ゲームが完成しないと感じて、デザイナーさんに依頼しようとも考えたのですが、人に任せるというのが大の苦手でして。
それだけでも気が滅入ってしまい制作どころではなくなるので、何かいい方法はないかと思っていたところ、itch.ioなどで販売されているドット絵素材に出会いました。
ミニミニ農園のドット絵素材もそんな感じで出会いました。
見た瞬間「めっちゃいいやん!」ってなったので、まずはこれを組み立ててみようとなりました。
そこで重要なのは、含まれている素材以上のことはしないということです。
例えば、ミニミニ農園ではユーザーさんからアバター機能が欲しいといった声が多数届いていますが、アバター素材は含まれていないので、それはやらないことにしました。
もし無理してやってしまうと、必ず開発が頓挫することがわかっていたからです。
そんな流れで素材を組み立てていったところ、キャラがチマチマ動いて可愛い感じのゲームが作れそうでした。
ちょうど使っていた素材が農園パックだったので、簡単な農園ゲームを作ろうと思いました。
それがミニミニ農園の始まりです。
言ってみれば「素材ドリブン」という感じでしょうか。素材の良さをそのまま活かすような。
まさにそうですね!素材ドリブン!こんなにぴったしの言葉も他にありません。
素材によってグラフィック上の問題が解決した以外、リリースまでに、想定外に手間取ったことはありますか?
そうですね、逆に言い換えれば素材にないことはできないので、今回だと例えばマイクラのように画面下のアイテム欄で道具を持ちかえるようにしたかったのですが、素材がないので、畑に好きな種をまけないことがわかりました。
でも、そこはあえて素材を作成せずに、吹っ切れてもう固定の作物しか育てられなくていいや、となりました。
それが仕様となって、岩に近づけば自動でつるはしアクション、木に近づけば自動で斧アクションとなるように・・というふうにゲームが固まっていきました。
素材の制限が良い意味でゲームをまとまった形にしているんですね。
ミニミニ農園以外のゲームも、素材ドリブンのようなスタンスで開発されたんですか?
はい、ミニミニ農園の前に出した「ネコとび!」というゲームでも少し素材ドリブンで作っていまして、ネコちゃんのドット絵は購入したものとなっています。
ただ、その素材は白猫キャラ一種類だけだったので、他のキャラは気合で自分でそれっぽく塗って素材を増やしました。
あんな小さなドット絵素材の色を変えるだけでもしんどかったので、次からはそれすらもやめようと思いました。
ひょっとして「木拳」などのキャラがシンプルな棒人間であるのは、キャラを作りこむのが大変だという理由もあったり?
その通りです!!!
自分で描けるのって棒人間くらいが限界ですね・・それですら辛いっていうところはあります。
格闘ゲーム「木拳」 - もっけん せっけん イミフ・ゲームズ
とはいえ、木拳はシリーズ800万DLのヒット作ですが、どんなところにこだわりましたか?また、ヒットした理由は何だと思いますか?
木拳は、まず格闘ゲームって難しそうなイメージがあると思うんですけど、それをスマホのライトユーザーに遊んでもらうにはどうすればいいかって考えた時に、もうめちゃくちゃシンプルにパンチとキックしかできないようにすればいいんじゃないかと思ったんです。そのほうが開発も楽ですし。
複雑なコンボ入力とか、実装が大変ですよね。そういうの一切無くして作ってみたのが木拳です。
ヒットの理由は、あんまりよくわかっていません・・これは自分の予想なのですが、見るからにお手軽感があるので、気軽にダウンロードされやすいのかもしれません。
特定の作品に限らず、ゲーム作りでこだわっていることはなんでしょうか?
そうですね、なるべくシンプルにわかりやすいゲームになるように心がけています。
というのも、自分自身が複雑なゲームができないというのがありまして、ぱっと見て何をしたらいいかわかるように作っているつもりです。
シンプルだけど奥深いゲームを目指しています。
私が遊ばせていただいたときに思ったこともまさに「わかりやすい」でした!どう遊んだらよいのか考えずともわかる作りですよね。
あと、ミニミニ農園でもそうでしたが、出現したアイテムやコインを取りに行かなくても吸い寄せてくれて、親切な設計だと感じました。
そう言っていただけてよかったです!
コインが吸い寄せられるのは、単純に自分がそれが好きだからですね。ですので、うちのゲームでは大体コインが吸い寄せられると思います。
シンプルなのはわかりやすくていいですが、逆にいうと単調ですぐに飽きられるという側面もあるので、そこがいつも悩ましいところです。
例えば「ネコとび!」は究極的にシンプルですが、飽きられないように工夫とかは?
ネコとびは、飽きられないようにキャラ替え、背景替え、BGM替えを入れてます。
しかし、そこまで遊んでくれるのは一部の方のみで、やはりゲーム単体において飽きないように楽しくなっていく仕組みが大切だなと痛感しています。
アプリのマネタイズに方針などはありますか?
マネタイズは、基本的に広告収入をメインにしています。
課金もあるアプリも出していますが、あまりうまく行っていない状況ですね。一度専門の人に診てもらいたいくらいです。
広告の入れ方も自分を基準にしていて、自分ならこれくらいなら許容できるかな、という感じで入れています。
本来なら収益を上げる入れ方があると思うのですが、正直どう入れていいのかわからないというのが本音です。
マネタイズはかなり下手な方だと実感しています。
コーヒーさんがゲームをつくり始めたきっかけはなんですか?
中学の時に初めて家にパソコンが来まして、当時は最新の富士通のWindows98マシンでした。
その中に体験版として入っていたのが「DigitalLoca Lite」という3Dゲームを作るソフトです。
今で言うUnityに近いかと思います。
それに触れた時にゲームって自分で作れるんだ!ってすごい衝撃を受けたことを覚えています。
もう楽しくって、学校から帰ったら夜中までずっとそれをいじっていましたね。
サンプルゲームの中身を隅から隅まで見て、少し改造して、どこが変わったか確認して、っていうのを繰り返してゲーム作りやプログラミングもそれで覚えました。
好奇心ひとつで何時間でも作業できていたので、若いってすごいですね。
かなり早い段階からふれていたんですね!ずっと体験版を使っていたんですか?
すっごいハマっていたのを親も知っていたので、そのあと製品版を買ってもらえました。
たしか体験版は作品の保存ができなかったような気がします。
情熱が伝わったんですね!DigitalLocaでつくった作品は、誰か他の人にもプレイしてもらったり?
作ったら親や兄弟、あと友達にも見てもらってましたね!
特に当時はゲームを自作すること自体珍しかったので、友達の反応は良かったです。
コーヒーさんはゲームクリエイターとして独立/起業されていますが、きっかけはなんでしょう?
もともとは、ガラケー時代のiアプリでゲームを作っていました。
それは趣味でやっていまして、ちょうどAndroidアプリの開発を覚えたとこだったので、そのiアプリをAndroid版として移植してGooglePlayで公開してみました。
すると、思いのほかダウンロードされたので、興味本位で広告を貼ってみたらその月に8万円くらい稼げてしまいまして。
いきなりの副収入に、妻と飛び上がって喜んだのを覚えています。それまでは手取り17万円で妻子持ちローン持ちで全然貯金もなくて苦しかったので。
それで、これは本数を出せばもっと稼げるのではと考えて、すぐにミニゲームを何本か出して、やった、これで生活にゆとりが出る・・と思っていたら、それらは全くダウンロードされませんでした。
そこでウケるアプリとそうでないアプリがあるのを学びました。
自分ではめっちゃ面白いと思っていても、ウケないアプリだと一銭にもならないんだって。
そこで方針を変えまして、最初に出したアプリの完全スマホ対応版を新規で作り出して公開しました。
今度はiOS/Androidの両方でリリースしました。
すると、そのアプリが初月25万円を稼いでくれたので、これはもう本業にしてやっていこうと決めて、会社を辞め独立することになりました。
それがビルダッシュ有ですね?
ビルダッシュ有は、その名前を思いついてゲームにしたんですか?それともビルをダッシュするゲームがあってその名前にしたんですか?
ビルダッシュ有は、ビルをダッシュするゲームが先にできました。
ちょうど語呂がいいネーミングを思いついたので、おふざけで付けました。
そのころはビジネスでやっていなかったので、面白おかしく作っていました。
コーヒーさんは独立と同時に法人として起業したんですか?
はじめは個人事業主でした。
それから3年後に法人化した流れとなります。
法人化したきっかけはなんでしょう?
ある年、払うことになった税金の額に驚愕したことが大きいですね。
それまではそこまで稼いでいなかったので、あんまり気にしたことがなかったんですけど、その年はすごい多くなってしまいまして。
キャッシュが一気に出て行ったので、資金繰りが危なくなったんです。
それで、法人化してきちんと節税とお金をある程度コントロールした方がいいなとなりまして、それがきっかけで法人化しました。
順当に売上を伸ばして法人化したんですね!
会社名でもある"CoffeeBreak"はどのような想いからつけたんでしょうか?
CoffeeBreakの由来はすごく単純で、コーヒーが好きなのとブレイクダンスをやっているので、それからきています。
息抜きにゲームでもどうぞって意味でも使えますね。
ブレイクダンス!座り仕事のコリも解消できそうですね!
そんなコーヒー好きなコーヒーさんに、コメダドリブン・クリエイターことぺんたんさんからお便りです!
ミニミニ農園は家を購入するまで遊ばせて頂きました。続きに期待しています!
自分はコメダで過ごすことが多いですが、差し支えなければコーヒーさんのお気に入りのカフェなんかを教えてほしいです!
ぺんたんさん!ミニミニ農園を遊んでいただいて恐縮です。
お気に入りのカフェですか・・やはり一番はBorCafeというスーパーカーカフェでしょうか。車が見られるのはもちろんですが、コーヒーも美味しいのでいつも入り浸っています。
京都だとカフェヴェルディやOkaffe kyoto 嵐山ですね!
ありがとうございました!
どれもスタイリッシュなカフェですね。BorCafeは、ひょっとしてコーヒーさんが想い描く将来やりたいカフェの形に近いのでは?
まさに将来やりたい理想のカタチですね!
車の斜め後ろにデスクとノーパソを置いて作業したいです!
BorCafeではオーナーとスーパーカーの話に花が咲いたり?
オーナーさまとはまだ一度もお会いできてないんです・・いつもは店長さんとお話させていただくのですが、店長さん全然車のこと知らなくてギャップがすごいです笑
そんなこともあるんですね笑
コーヒーさんもスーパーカーを所有していますが、お車の魅力を語っていただけますか?
もともと車を買う予定はなかったんですけど、子どもの学校に合わせて引っ越した先が車がないと不便なところでした。
いずれはクラシックカーやスーパーカーにも乗りたいねって話していたので、妻にMT車の免許を取ってもらって、まずはMT車の練習になりそうな車をくださいって車屋さんに相談しました。
すると、スバルのWRX STIのMT車を紹介されました。これに乗れれば、だいたいのMT車は大丈夫でしょうと。
それに3年毎日乗って練習しました。何回もぶつけたりしましたが、その経験が今に生きています。
それから、そろそろWRX STIにも飽きてきたねって話をしていて、次に乗るならターボ車ではなく自然吸気エンジンで馬力が高くて音がいいやつがいいなと思いました(時代に逆行した車選び・・)。
国産で探しましたが、しっくりくるものがなくて。なにかの拍子でポルシェとかどうなんってなりました。
でも、夫婦揃ってポルシェはあまり好きではなかったので、いやいやポルシェはないやろーって言いながら探したら、ちょうど条件に合ったエンジンで馬力も高くMTの車があったんですね。それで、一応見に行ってみることになりました。
実際に見てみると微妙だったんですが、妻がこれだったらまあいいかなと言ったので、あまり乗り気じゃなかったのですが買い換えることにしました。でも、納車されて実際に乗ってみたらめちゃくちゃ楽しくて。これはめっちゃいいやん!となりました。
金額的にもそれなりに高くてだいぶ躊躇しましたが、僕は追い詰められないと仕事しない性格でして。そのころはゲームも一本も出せていなかったので、借金を背負って自分を追い込んでみるとどうなるかって興味が沸きまして、借金駆動開発ですね。
最近、また別のポルシェに買い替えたのですが、これは完全にディーラーの人にやられました。ある日オイル交換に車持って行っただけなのに、なぜか次のポルシェを買うことになって店を後にしましたから・・
ただ、今回買ったポルシェ911ターボSという車は乗ってみたらすごい車だったので、この歳になってもまだこんな楽しいことってあったんだ!ってなるくらい、すごいテンション上がっています。
借金はさらに2倍くらいに膨れ上がりましたが、この車を所有したことで、それ以上にがんばれるモチベーションが湧いてくるので、買って良かったかなと思います。
めっちゃカッコいい…
— CoffeeBreak@農園ゲーム公開中! (@CafeBreakin) October 30, 2020
向こう1年仕事がんばれそう pic.twitter.com/snrfdOdZOr
コーヒーさんにとって開発のモチベーションを支えるのにポルシェは大きな意味があるんですね!
コーヒーさんの開発環境はどのようなものでしょうか?
MacBook Pro 15inch 2015年モデルを使って開発しています。
サブ機のMacBook Pro 13inchはいつもリュックに入っていまして、カフェで開発するときはそれを持っていきます。
メインとサブ機でソースコードはBitbucketで、ファイルはGoogleDriveで共有しています。
この構成にしてから、サブ機を持っていけばどこへ行っても開発ができるようになって、とても便利になりました。
最後に、ゲームクリエイターを目指す人へのアドバイスをお願いします!
自分はそんなアドバイスできるほどの者ではないと思いますが、ゲームは自己表現のひとつだと思っています。
創作をする人って、それぞれ描かれるべきストーリーを心の内に秘めていると思います。イラストや映像、音楽、ダンスなどいろんな表現があるなかで、ゲームクリエイターにとってはそれがたまたまゲームだったというだけで。
世の中にはゲームクリエイターになる方法が沢山あって、プログラミングとかもそうだと思うのですが、その勉強ももちろん大事だと思います。
しかし、あなたの中にある"描かれるべきストーリー"をこの現実世界でどのように表現するかが一番大切なことだと思います。
プログラミングはあくまで手段です。
そのストーリーがアウトプットできるのなら、別に小説やアニメ、ノベルとかでもいいと思います。
でもなぜゲームなのか、ゲームじゃないといけないのかというところを突き詰めていくと、自分がこの世界でなにを表現したいかが少しずつわかってくるんじゃないかな、と思います。
コーヒーさん、たくさんの質問にお答えいただき、ありがとうございました!
コーヒーさん、よろしくお願いします!
まずは「ミニミニ農園」、リリースおめでとうございます!
ミニミニ農園はこれまでリリースしてきたゲームとジャンルが変わったようですが、どんなきっかけで作ろうと思ったのでしょうか?