受注先?受託先?「受〇先」の誤った使い方と言い換え
本記事は、「混乱しやすい[~元/~先][~er/~ee]」の補足です。ここでは「~先」を使うべきではないケースについて、解説したいと思います。
「受」と「先」は組み合わせるべきではない
以前「混乱しやすい[~元/~先][~er/~ee]」でも少しふれましたが、受入先という言葉は、言葉の成り立ちから考えれば、受入という動作を行われる側を指すので、派遣元(派遣する側)を意味しますが、実際には受け入れる側で使用されています。原義に従えば、これは誤りであって、本来は受入元というべきでしょう。
では、なぜこのような誤用が発生するのか。それは、「受」という漢字自体が受け身的な動作であるためと考えられます。そのため、「受」がつく言葉に、動作が受け身的に行われる「~先」をつけると不具合が生じてしまいます。
「受〇先」は別の表現に言い換える
「受〇先」のようなたった3字の中で矛盾をはらむ言葉を使用するのは、好ましくありません。なぜなら、人によって解釈が異なる場合があるからです。
しかし、実際には受託先、受注先、受領先、受任先といった表現を見かけることがあります。これらは動作を行う側なのか、行われる側なのか、文脈で判断する必要があります。
基本的に、受〇先という言葉は使用せず、「受〇元」と言い換えるか、別の「~元」「~先」で言い換えるべきでしょう。
例えば、受注先というどっちとも判断がつかない言葉がある場合、注文を受ける側を指すなら受注元または発注先と言い換えて、もし注文する側を指すなら「発注元」と言い換えれば、わかりやすくなります。
「受〇先」の言い換え例:
×受注先 ⇒
受注する側なら:〇 受注元、発注先
発注する側なら:〇 発注元
×受託先 ⇒
受託する側なら:〇 受託元、委託先
委託する側なら:〇 委託元
×受任先 ⇒
受任する側なら:〇 受任元、委任先
委任する側なら:〇 委任元
×受領先 ⇒
受領する側なら:〇 受領元、提供先など
渡す側なら:〇 提供元など
受〇先という表現の不具合は、思わぬトラブルを生む可能性があります。
例えば、契約書で「受注先」と書いた場合、受注側を指すのか発注側を指すのか、解釈が分かれてしまうおそれがあり、契約違反が生じるリスクになりえます。そもそも、混乱を招く表現を契約書などでは使用すべきではないでしょう。
もし正式な文書でこのような表現があった場合、どちら側を指しているのか確認するようにしましょう。