口コミサイトの運営をやめた理由
サイト収益化の成功はPV数にかかっている。これは、長らくサイトを運営してきて実感した真理のひとつです。
そうなると、どれだけコストや手間をかけずにPV数を最大化できるのか、効率性を重視するようになります。
PV数を生むのは詰まるところコンテンツ、そんなコンテンツが自動的に生成されるサイトを作れば良いんじゃないか・・例えば、口コミサイトなんかどうだろうか。そう思い、私は自動車教習所の口コミサイトを作りました。
収益化の見通しが明るく、成長率も高かったのですが、運営して1年ほどでサイトを閉鎖しようと思うに至りました。
ここでは、その考えの変遷や経緯を記したいと思います。
発想
口コミサイトは、コンテンツが自動的に生成(投稿)されていくので、それに応じてPV数も増え、収益も大きくなる、さらに一度作れば後はほったらかしにできるので、費用対効果が大きいと考えました。
なぜ教習所にしたのか
口コミ対象として、教習所を選んだのにはいくつか理由があります。
- 流行りものとは異なり、つねに一定数の人がかかわっている
⇒ 一定数の検索ボリュームが担保されている - 全国に1,000箇所以上あるので、サイト規模として悪くない
⇒ ロングテール効果が出やすい - 教習所は準公的機関のようなものなのでデータを取得しやすい
⇒ サイトがほぼ必ずある、連盟などが組織されデータが整理されている - 各教習所に対して営業しやすい
⇒ ピックアップして紹介、広告掲載など - 対人商売のため、通学者が強い感情を抱きやすい
⇒ 口コミが投稿されやすい
サイト作成の概要/コスト
サイトづくりにかける労力の8割ぐらいはデータベースの作成に費やしました。
手順として、全国の自動車教習所の基本情報をエクセルに入力、CSVファイルにしてデータベースにインポートしました。公認の教習所に照準をあわせ、合計で1250件ほど処理しました。所要時間は2週間ほど(夜間作業のみ)、単純な作業をひたすら繰り返すのが唯一辛かったところです。
サイト運営にかかるコストはドメイン代の年1,800円のみです(厳密にはサーバー年間契約料6,000円もありますが、複数のサイトで共用しているので省きます)。単純計算、1か月150円収益があれば、黒字化します。Google AdSenseであれば1か月1,000PVもあれば問題ありません。ページ数から見ても、ハードルはかなり低いです。
プログラム的構造
サイトを作るにあたって、CMS(WPなど)は使いませんでした。直打ちでコーディング、動的処理はPHPです。
HTML/CSSで都道府県別カテゴリー、各教習所の情報を表示する型を作成します。URLのクエリに応じて変数に値を入れかえ、それに応じてSQLでデータベースから特定の情報を取得し、流し込むようにしました。
クエリで生成されたページは検索エンジンにインデックスされづらいので、サイトマップをHTMLとXMLで作成しておきました。ただ、クエリで生成された1,000件超のページを網羅するXMLサイトマップのジェネレーターはほとんどなく、対処できるソフトウェアを探すのに少し時間がかかりました。
結果的に、3~4週間で1,000ページを超えるサイトが立ち上がりました。立ち上げ後は、特にコーディングすることもなく、ほぼ放置です。
萌芽
全ページのインデックス登録が完了してから1か月もしないうちに訪問者がじわじわ増えてきました。予想通り、ロングテールが奏功した感じです。
数か月で月6,000~7,000PVに到達、その時点で収益は月1,500円ほど(Google AdSenseのみ)、口コミは400件ほど蓄積しました。
これは始まりに過ぎない、ここから口コミが増えるだろうし、PV数も収益も比例すると期待しました。
また、PV数がもっと増えれば、広告主から直接広告掲載を請け負えます。さらに、教習所に対して営業(紹介や広告設置)をかけられるようにもなるので、収益化の見通しは明るかったです。
もちろん、サイトのデザインやビジュアルを改善したり、SNSアカウントを作成して訪問の間口を広げたりと、追加作業の発生も想定内でした。
しかし、このあたりから雲行きが怪しくなります。問題ある口コミが目立つようになってきたのです。
問題ある口コミ
コメントが蓄積されていくにつれて、さまざまなタイプのコメントがあることがわかりました。大まかには、次のように分類できました:
- 7割:丁寧な言葉使いで、根拠があり、論理的で妥当性のある口コミ
- 2割:特に理由が示されていない感情的な口コミ
- 1割:問題ある口コミ
ネックになったのが、問題ある口コミです。問題ある口コミとは、次のような内容です:
- 罵詈雑言
- 個人が特定できるコメント
- 被害妄想ベースのコメント
- 自作自演
罵詈雑言は、要するに悪口、ののしり言葉、人を不快にする言葉です。根拠もない場合がほとんどなので、場合によっては中傷とも受け取れます。
また、教官や受付の担当者の名前を出すなど、個人を特定するコメントも少なくありません。好意的なコメントもありましたが(例:〇〇先生のおかげで合格しました!のようなコメント)、多くは名指しでボロクソに貶めるようなコメントでした。サイトの利用規約として、個人が特定できるコメントは禁止していましたが、おかまいなしです。
ちなみに、個人が特定できるコメントへの対処法として、個人名を伏字または非表示にしていました(はじめは削除していましたが、後々に問題となった場合に証拠として残しておくため、データベース上には残しておくことにしました)。
被害妄想は、もう手が付けられません。とにかく攻撃的なコメントが多く、どこか陰謀論的なテイストもありました。特に粘着質で、コメントを非表示にしても、しばらくしたらまたコメントしてきたりもしました。
同じIPアドレスから立て続けに好意的なコメントが投稿されることも頻発しました。つまり、自作自演が疑われます。この類のコメントは、完全べた褒めというよりも、少し物語(根拠)をつくって、最終的に素晴らしい体験だったと帰結する傾向にありました。
問題ある口コミによる影響
問題ある口コミに対して、削除要請が数件寄せられました(たまに妥当性のない削除要請もありました)。削除要請に対しては、即時確認、即時対応していましたが、口コミされた側もこちらもあまり良い気分ではないでしょう。
最も危惧するのは、口コミをきっかけとする訴訟です。一般的に、口コミサイトの運営者に対する求償は稀です。あっても、投稿者のIPアドレス開示要請ぐらいに留まりそうですが(そのため、口コミ投稿時には、投稿者のIPアドレスを取得するように設定していました)、リスクは根絶したいです。そして、なるべくなら誰かの反感や恨みを買うようなことはしたくありません。
これらの口コミによる弊害は精神的にかなり負担となりました。
サイト閉鎖を決める
教習所の口コミサイトは、割と順調にPV数を伸ばせました。しかし、その主要コンテンツとなるコメントの管理が、思いのほかしんどくなってきました。
負の感情が存分に込められたコメントを見続けていると、気が滅入ります。そして、それが妥当性なく教習所の運営を妨害したり、特定の個人を中傷することはあってはなりません。こう考えだすと、サイト存続は今後もさまざまなリスクと共に精神的なプレッシャーがかかると思い、サイト閉鎖を考えるようになりました。
詰まるところ、口コミサイトの運営はコメント管理に集約されるかもしれません。サイトを構想した段階で人は強い感情が生まれると言葉として吐き出したくなる、特にそれが負の感情であればなおさらだと考えていましたが、無規律な言葉に対する管理からくるプレッシャーがこれほど堪えるとは予想外でした。
収穫はあった
今まで多くのサイトを作ってきましたが、収益化の見通しがあるサイトを閉鎖するのは初めてでした。
ただ、このサイトを運営したおかげで、技術的な勉強になりましたし、運営上の問題点を知ることができました。そして、訪問者をひとつの群れと見たときに、さまざまな属性や性質があると、認識を改めることができたのは大きな収穫です。このあたりの経験が、異なるサイトで活かせるのではと、ポジティブにとらえるようにしています。